もぐみん(@agrimichi)です。
家庭菜園初心者向けに、さつまいもの栽培方法・育て方の基本をまとめました。
一般的な知識だけでなく、自身の経験から得たノウハウを盛り込んでいるため初めての方も安心してさつまいもを育てることが出来る内容になっています。
さつまいもとは
さつまいもはヒルガオ科に属す作物で、根の肥大した部分です。
中国経由で琉球(沖縄)→薩摩(鹿児島)に伝わり広まったことが名前の由来。
痩せた土地でもたくさん出来、栄養価も高いため、江戸時代から飢饉を救ってきた英雄的作物です。
炭水化物が多く含まれているほか、ビタミンCやEも豊富。
そして食物繊維とヤラピンという成分により、便秘解消効果も高いのです。
もちろんご存知の通り食味も抜群で、ホクホク・抜群の甘さは格別。
特に焼き芋は鉄板で、加熱方法しだいで格段に甘味が増していくことから熱烈なファンも多いことでしょう。
家庭菜園では肥料もほとんどいらず、つるを土に挿しておくだけで芋が出来ちゃいます。
全野菜作物のなかで最も簡単といっても過言ではないので、ぜひ初心者も栽培に挑戦してみてほしいところ。
さつまいも栽培の特徴
科目 | 発芽(ほう芽)適温 | 生育適温 | 連作障害 |
ヒルガオ科 | 28~32℃ | 22~30℃ | なし |
日当たり | 株間 | 収穫まで | pH(土壌酸度) |
日なた | 30㎝ | 約4ヶ月 | 5.0~6.0 |
さつまいもの原産地は中央アメリカで、強い日光を好み、乾燥にも耐える作物。
種芋から出る苗を切って土に刺せば、節の間から不定根が出て、光合成により根が肥大して芋になります。
収穫は苗植えから4カ月ほどで、追肥や水やりの手間が要らず、初心者にも簡単に栽培できます。
どんな土壌にも適応し、痩せた土でも良くでき連作障害もありません。
ただ水はけの良い環境を好むので深く耕し高畝にしてやりましょう。
また、窒素は少しでもやりすぎると茎葉が茂ってつるぼけになり芋の肥大が損なわれるため注意します。
ポイント
・肥料は極力やらない
・水はけを良くして育てる
さつまいも品種ごとの特徴一覧
さつまいもはさまざまな品種があり、甘い種類が多いです。
その中でも育てやすく代表的な品種を紹介します。
紅はるか
シルクスイート
紅あずま
安納芋
パープルスイートロード
金時
さつまいもの栽培時期
さつまいもの地域ごとの栽培スケジュールになります。
苗の購入で選ぶポイント
さし苗は種芋から自分でつくることもできますが、購入した方が無難です。
良いさし苗を見極めるポイントとして
①茎が太い
②葉色が良く厚い
③本葉7~8枚ほど、長さ30cm程度
を基準にしてください。
さし苗は、一日ほど日陰に置いて少しだけ萎れさせ、バケツの水に数日間入れて復活&発根を促していください。
節から白い根が出始めたら植え付けの合図。
この処理をおこなうことで、苗の発根が促され活着が格段に良くなります。
メリクロン(ウイルスフリー)苗といって種芋から芽が出たポット苗を購入し植え付ける方法もあります。
鉢か畝に植え付けるとどんどん茎葉が生長するので、本葉7~8枚ほどになったら同様の処理をして植え付けます。
種芋から芽出しで苗を作る方法
サツマイモを種芋にして芽出しすることも出来ます。
まず種芋を48℃のお湯に40分ほど付けることで消毒と萌芽を促します。
コンテナあるいは畝に株間、条間ともに30㎝以上あけ、種芋を横に寝かせて軽く2~3㎝程度土をかけて埋めましょう。
元肥は1㎡畝あたり888を200g、植物性堆肥を3~5㎏投入。
温度25~32℃、湿度80%以上の環境が芽が出る条件なので、ビニールトンネルなどで保温し、表土が乾燥しないよう適時水やりします。
10℃以下にさらされると腐るので注意してください。
およそ一ヶ月半で芽が出てくるので、日中22~25℃、夜温18℃以上で管理し、茎葉が生長したら本葉7~8枚ごとにカットして植え付けれます。
さつまいもって春ごろ土に埋めたら、こんな風に芽が出ます。
この数節になった芋づるを切って土にさしこみ埋めれば、また大きな芋ができる。
すごいですよね。
さつまいもの溢れる生命力から、元気をもらいたい。 pic.twitter.com/l5yxnjsApC
— もぐみん@家庭菜園研究家 (@agrimichi) January 30, 2020
土づくり(耕し方と肥料について)
植え付けの1週間前に苦土石灰を50g/㎡まきしっかりと耕してください。
高さ30cm(砂壌土は10cm)、幅90cmの畝をつくります。
サツマイモは根が深くまで伸び、水はけのよい状態を好むためしっかりと耕し、高めの畝にしてください。
そして種まき当日、堆肥・元肥を全面にばらまき畝が崩れない程度にクワで軽く混ぜこみ、平グワorレーキで表土をフラットにします。
ポイント
・酸性を好むため苦土石灰は少量にする
・肥沃な土(黒土や粘土質など)や野菜を追肥栽培した後畝では堆肥のみでOK
・植物性堆肥(バーク堆肥・腐葉土)なら当日投入OK
マルチングで除草の手間を省こう
多収を狙い、かつ雑草をとる手間を省くために黒マルチすることをおススメします。
なるべく雨後で土が若干湿った状態で張ると良いでしょう。
耕した畝の上からマルチをかぶせ、周りに土をかけて固定します。
だいたい株間・条間30cmを目安に、カッターで斜めに切り、さし苗の穴を作っていってください。
メモ
芋の大きさは株間で決まります。すこぶる大きな芋を穫りたいという方は、株間、条間を50㎝以上あけて植え付けてみましょう
植えつけ時期と方法
サツマイモは、植え付けてしっかり活着することで収量が増えます。
植え付けた後一旦葉が枯れ、新芽が出ると収量が低くなる場合が多いです。
なので畝土がしっかりと湿り、直射日光の当たらない曇天時が続く日or日光の当たらない夕方を選ぶのがベター。
この時土が乾いているようなら水を注ぎこんで植え付けてください。
垂直ではなく、斜めになるようにしてさし苗を埋めます。
だいたい平均気温18度以上で地温15℃以上になれば植え付けていけます。
さし苗をマルチの穴に埋めていきます。
本葉の節から根が出て芋になって肥大するため、必ず3~4節目までは土に埋まるようにしてください。
埋めた後は、黒マルチの間から熱風が押し寄せないよう、マルチの上から株元に土をかけ、隙間をふさぎます。
最後に上から再度たっぷりと水をかけてやりましょう。
水やりは活着するまで
サツマイモは強いのでさし苗して少々水やりしなくても、最終的には活着します。
しかし一旦葉が枯れると収量が落ちるので、根付く1週間は表土が乾燥しないよう水やりをすることをおススメします。
それ以降は一切水やりはいりません。
真夏時に萎れが連続してみられる場合のみ潅水しましょう。
特に粘土質の場合は保水力が高いので、過度な水やりは味と収量を落とすことに繋がります。
追肥はいらない
サツマイモは吸肥力が強く、窒素肥料によりつるぼけしやすいため追肥しません。
途中、畝が葉で埋まるころ、葉色が極端に薄くなり黄化がみられる場合のみ少量の化成肥料888(20g/㎡)を畔にパラパラと蒔いてやりましょう。
つる返しのやり方
生育旺盛になる夏ごろ、つるが繁栄しすぎて畔の土につく場合があります。
そこから発根し、養分が分散してしまいます。
なので畔に出たつるは上げて畝側に返しておきましょう。
夏から収穫までかけて、2~3回つる返しします。
メモ
つるは切り取って煮物にしたら格別に美味しいですよ。
たくさん穫りすぎると光合成を阻害しますが、少しくらいなら獲って大丈夫。
収穫時期の目安・方法
植え付けから140~150日、一般地では10月中旬~11月ごろ、晴天が続く午前中に収穫します。
収穫が遅くなると食味が落ちるので、畝端で試し彫りしながら遅れないように穫ってください。
特に霜が降りると枯れてしまい、さつまいもの味も極端に落ちてしまうので気を付けましょう。
まずつるを鎌で根本から切り取り、マルチを剥いで畔からクワでほぐしながら、てこの原理で土を盛り上げて穫ります。
周りをほぐしていくと、最後はつるの根元から根こそぎとれて爽快。
収穫後は泥付きのまま半日天日干しすることで乾燥し、甘味が増します。
保存方法
収穫した芋は決して水洗いせず、乾いた泥を落とす程度にしてください。
保存は13~15℃が適温。10℃以下では低温障害を受け腐りやすく、15℃より上がると芽が出てしまいます。
なかなか適温を維持できないのが実際なので冷蔵庫には入れず、常温保存しましょう。
新聞紙に包む,、あるいはもみ殻を入れた段ボールに入れ、室内に保管すれば数か月以上持ちます。
メモ
獲ったばかりの芋は甘みがほとんどなく美味しくありません。
保存することで徐々に芋のデンプンが糖に変わっていきます。
収穫後最低でも10日、理想は数か月おけば追熟して抜群の甘味が出てきますよ。
失敗しないための生育診断
実が割れる
収穫したさつまいもに割れ目がある場合は、乾燥から急激に水分がきた場合です。
土壌水分を適度に保つため、肥料成分の少ない植物質堆肥を施すことで回避しやすいです。
虫喰いがある
堆肥を入れるとコガネムシなどが繁殖し食害が増えるので、サツマイモ栽培では堆肥を入れない、あるいは前作の数か月以上前に入れておくという考え方があります。
動物性の堆肥は養分が濃いく、コガネなどの害虫も増えやすいので牛糞堆肥の直前使用はおすすめしません。
まったく甘くない
さつまいもは収穫仕立ては元々甘味が少ない状態です。
長期間貯蔵するとデンプンが糖化して徐々に甘くなってきます。
甘味が強く、しっかり収量を上げるには「水はけ・通気性」と窒素量を多くしすぎないことが鍵です。
大きくならない
サツマイモは肥料なしで育てれる作物として有名です。
そして窒素肥料をやりすぎるとつるぼけして根が肥大しないので注意することもよく言われます。
ただし、真砂土や一般的な肥沃の土壌なら、少なかれど初期成育を促すため窒素肥料は必要です。
また、カリウムは根の肥大を促進させるため、重要な養分源です。
前作で肥料を大量に使った場合以外は、少量肥料を施すようにしましょう。