家庭菜園研究家のもぐみん(@agrimichi)です。
家庭菜園初心者向けに、トマト・ミニトマトの栽培・育て方の基本をまとめました。
一般的な知識だけでなく、自身の経験から得たノウハウを盛り込んでいるため、初めての方も安心してトマト・ミニトマトを育てることが出来る内容になっています。
トマト・ミニトマトとは
トマトは野菜の中で最もポピュラーだと言っても過言ではない存在。
品種もさまざまで、大きさの違いだけでなく黄、オレンジ、黒色など多彩です。
食味はご存知のとおり、実がジューシーで甘味と酸味が強いのが特徴。
料理はそのまま果物のように丸かじりしても良し、サラダ、スープ、ケチャップ‥生食から加工までなんでもござれです。
和・洋・中問わずトマト料理も多くあるので、まず食べていて飽きるということはないでしょう。
栄養価は「トマトが赤くなると医者が青くなる」と言われるほど高く、特にビタミンC、カロテン、リコピンなどが豊富に含まれています。
そんな野菜界のトップスター「トマト」は、もちろん家庭菜園でもピカイチの人気。
ちょっと実をならす程度なら簡単ですが、何段も鈴なりにならすには一筋縄でいかない奥深さもあります。
ただミニトマトや中玉トマトなら初心者でも栽培しやすいので、ぜひ挑戦してほしいところ。
トマト・ミニトマト栽培の特徴
科目 | 発芽適温 | 生育適温 | 連作障害 |
ナス科 | 24~30℃ | 20~25℃ | あり(3年程あける) |
日当たり | 株間 | 収穫まで | pH(土壌酸度) |
日なた | 50㎝(ミニ40㎝) | 苗2ヵ月・種4ヵ月 | 5.5~6.5 |
トマトの原産地はアンデスの高原地帯で、涼しく乾燥した環境を好む野菜。
ミニトマト、中玉トマト、大玉トマトともに基本の育て方は同じになります。
ただ大玉トマトは露地(外の畑)だと病害虫に侵されやすく、若干難易度は高め。
収穫まで苗からだと2か月、種まきからだと4カ月はかかります。
暑さには強いほうですが低温にもよく耐え、昼夜の温度差があるほど良い果実ができます。
また、日光が十分に当たる場所で旺盛に育ち、不足すると軟弱に。
湿気にもめっぽう弱いため、深く耕して水はけを良くする&堆肥を十分に入れてやりましょう。
肥料をやりすぎると徒長して葉ばかり茂り(つるぼけ)実つきが悪くなるので元肥を抑えめにしてください。
ポイント
・つるぼけ(葉が茂り実が出来ない)しないよう元肥(窒素肥料)は少なめ
・日当たり・水はけの良い場所で育てよう
トマトのおすすめ品種一覧【フルーツトマトって?】
トマトは品種改良が進み、耐病性のある種類が多いです。
その中でも家庭菜園初心者におすすめな定番品種をあげておきます。
大玉トマト
ホーム桃太郎EX
家庭菜園で作りやすい定番人気品種。病気に強く生育旺盛である。「EX」はさらに耐病性がupしている。
麗夏(れいか)
ホーム桃太郎と双璧をなす定番品種。生育旺盛で病気に強く、優れた品種に贈られる農林水産大臣賞も受賞している。
中玉トマト(ゴルフボールより少し小さい)
フルティカ
丈夫で生育旺盛、病気になりにくく裂果(実が割れる)も少ない。食味も良いので初心者が畑でまず取り組みたいトマト品種ともいえる。
レッドオーレ
フルーティーな食味で丈夫な品種。
ミニトマト
CF千果
食味の良さと耐病性がそろった優秀ミニトマト品種。初心者が迷ったとき、CF千果を選べばまず間違いはない。
アイコ
卵のような形をしたミニトマト。甘味が強く見た目もかわいい、そして丈夫さも兼ね備えている。
トマト・ミニトマトの栽培時期
トマトの栽培スケジュールになります。
あくまで目安なので詳細は種袋の裏を確認してください。
中玉、ミニトマトなら病害虫に侵されにくいこともあり比較的容易に晩秋まで持ち、ジワジワと甘い実がなってくれます。
種まき・育苗【時期と方法について】
培養土を入れた3号ポリ鉢を用意して、事前に鉢へ水やりをした後、種を3粒均等におきます。
軽く土をかぶせておさえつけ、再度水を十分にやってください。
発芽を促進するため、ビニール温室や不繊布をかけるなど、なるべく暖かい場所(24℃~30℃適温)におきましょう。
注意ポイント
保温は暑くなりすぎに注意! ビニール温室はすかして適度に通気性を良くしよう
本葉が1枚出るころ、生育の悪い2本を間引いて1本仕立てにします。
そのまま本葉が4~5枚になるまで育てたら、4号ポット(12cm)に植え替えします。
メモ
セルトレイを使えば、間引く手間がかかりません。同じく本葉が4~5枚になった時、4号鉢に植え替えしましょう。
本葉が8~9枚で第一花房(一番最初につく花)が咲き始めるころまで、約2か月間育てます。
種まき・育苗ポイント
・表土が乾燥したら朝水やりする(夕方は徒長するのでやらない)
土づくり【耕し方と肥料について】
まず種まきの約一週間前に、粒状苦土石灰を150g/㎡(1㎡おおよそ3握り)まき、しっかりと耕します。
この時、耕しついでに高さ20cm、幅90cm程の畝を作っておきましょう。
そして種まき当日、堆肥・元肥を全面にばらまき畝が崩れない程度にクワで軽く混ぜこみ、平グワorレーキで表土をフラットにします。
土づくりポイント
・苦土石灰散布は、植え付けの一週間前に終わらせておく
・植物性堆肥&化成肥料なら、即日植え付けOK
・元肥の化成肥料(特に窒素分)は控えめに
マルチング【水やりが楽に】
トマトは多湿に弱く、乾燥した状態を好みます。
とはいっても多少の水分がなければ果実は肥大しませんし、急激な乾燥から水分がくると裂果の原因にもなります。
黒マルチをすることで土中の水分バランスを安定させ、水やりも減って生育良好になります。
地温も上がるので、気温が低めの早植えにも適しているでしょう。
さらには雨による泥はねを防止し、病気の予防にもなります。
支柱の立て方【らせん支柱が便利 必要な高さは?】
少数植えるときは一本直立式、4本植えるときは合掌式の立て方をします。
1株なららせん支柱を使う方法もあります。
らせん支柱
1株の時はらせん支柱1本に誘引させるのが便利です。
一本直立式
根を傷めないよう根本から少し離れたところに支柱をたてましょう。
第一花房の下の節あたりをヒモでゆとりをもたせて結びます。
合掌式
それぞれ50cm間隔で畝の端から斜めに支柱を差し込み交差させます。
交差させる位置はなるべく高くします。
交差させた部分に上から支柱を一本のせてヒモで結んでください。
雨除け【いつから? そもそも必要か】
トマトは加湿に弱く、病気感染しやすい野菜。
さらに土壌水分が乾燥から急激に多くなると、実が割れることが多いです。
植え付け直後からの雨よけで土壌の水分コントロールし、裂果や病気を予防します。
とは言っても家庭菜園において雨よけは必須ではありません。
正直大雨が降れば結局畝全体に水分がしみ込むものなので、効果を期待しすぎるのも禁物。
実際、もぐみん自身が毎年トマト・中玉・ミニトマトは雨よけなしでちゃんと収穫まで漕ぎつけます。
苗の植え付け【時期と植える間隔】
種から育てるのは2か月かかるため、初心者は市販苗を植えるのをおすすめ。
さらに接木苗なら連作障害の心配もなく安心。
苗は第一花房が咲き始め、茎が太くまっすぐ株間がつまり子葉がついているものを選びます。
花が付く前の小さい苗を植え付けると、水と肥料を吸いすぎて葉が茂り(草ぼけ)実がつきにくくなりやすいです。
株間、条間ともに50㎝(ミニは40cm)あけて植え付けていきましょう。
まずポット苗へ十分水やりをしておきます。
株間は50cmとりポット大のマルチ穴をあけてください。
植穴にたまるまで水を注ぎこみ、根株をくずさないよう、気を付けてポットから苗を抜きとってください。
植穴に入れ軽く土をかけ押さえ、最後にもう一度水をかけ完了です。
植え付けポイント
・3分の1ほど根株が出るよう浅植え
・通路側に花が向くように植えることで、収穫がしやすくなる
風で倒れないよう、第一花房の下あたりを支柱にゆるく結び誘引してあげてください。
徒長した苗は寝かせ植え
ひょろっと徒長した苗は、サツマイモの苗を植えるように寝かせて植えましょう。
根量が多くなり、樹勢が強くなることで収量が増えます。
二週間もすれば起き上がってくるので、そのころに支柱に誘引しましょう。
注意ポイント
・接ぎ木苗では行なわない
授粉と着果【ミツバチ・トマトトーン・綿棒で】
第一花房が2、3花ほどついたころから授粉(じゅふん)をはじめましょう。
第一、二、三花房がつくころはまだ気温が低いので授粉しにくい状態。
早植えした場合、最初は確実性の高いトマトトーン(着果ホルモン剤)の使用をお勧めします。
はじめに果実がつかないと茎葉ばかりしげり(つるぼけ)、その後の収穫が減る可能性があるので、ぜひ着果させたいところ。
若葉にかからないよう花の中心に1~2回ふきかけます。日を空けた同じ花への二度がけは奇形になりやすいのでやめましょう。
花が開ききらない午前中にやるのが良いでしょう。
適温になってからは(25~30℃)、筆や綿棒をつかって花をなでて授粉させる、支柱をたたいて振動で茎をゆらして授粉させる方法でも十分です。
水やり【頻度・やる時間は?】
トマトはもともと乾燥した地域で良く育つ野菜。
しかししっかりとした実を次々にならすには、むしろ水やりで水分コントロールが重要です。
基本的には朝に水やりするのが良いでしょう。(真夏は早朝か夕方)
第三段花房(ミニは四)がつくまでは旺盛に生長してつるぼけしやすいので、萎れが見られない限り水やりはいりません。
やる時も1株500mlペットボトル1本分にとどめておきましょう。
その後は実の肥大のために若干の水分がいるので、表土が乾燥したらこまめに同量水やりします。
いざ収穫が始まってからは多くの水分がいります。
晴天が続き表土が乾燥するなら1株あたり大きなペットボトル量(1.5ℓ)を3日おきほどにやると良いでしょう。(真夏の晴天時は毎日)
誘引の仕方【クリップor麻紐で】
植え付け時に誘引した場所から成長にともなって約20cmおきに上へ結んでいきましょう。
生長とともに茎が太くなるため、誘引はヒモに余裕をもたせて八の字でつけます。
専用のクリップなどは露地畑より少数ですむ鉢植えでの使用が適しています。
仕立てと芽かきの時期・やり方【ハサミは× 脇芽は挿し木に】
トマトは生長に伴って茎の間から旺盛に脇芽が出ます。
初心者は主枝のみの1本仕立てがやりやすいので、脇芽は早々に摘み取っていきましょう。
メモ
・2本仕立てのやり方
・連続摘心栽培のやり方
もあります。
植え付けて二週間も経つ頃には脇芽が出てくるので、5㎝くらいまでには摘み取ります。
それからは生長が旺盛になるので、1週間以内には芽かきを繰り返していくと良いでしょう。
ハサミなど刃物を使うとウイルスが伝染する可能性があるので、清潔な手でとりましょう。
メモ
芽かきしたわき芽は挿し木し、十分に水分をやると簡単に根付きます。
ちなみに肥料過多で茂りすぎる場合、あえて脇芽を伸ばし肥料分を吸わせてから芽かきするという手もあります。
主枝の摘心【支柱の高さで】
支柱の高さ、あるいは収穫目標の最上段花房の花が咲いたらその上2葉を残し主枝を摘心します。
大玉トマトの場合上手な人は6~7段花房までつけ収穫できますが、普通は4段までです。
ミニトマト、中玉トマトの場合はあまり気にせず支柱の高さで摘心しましょう。
摘果【目的とタイミングについて】
大玉トマトは一段で3~4個まで果実を実らせます。
それ以上一段でなったものは、早めに小さいものから摘果しましょう。
残りの果実に栄養を集中させて甘く大きなトマトにならすのが目的です。
摘果するタイミングは、まだ1段のトマト全体が青いうちで、先っちょの明らかに肥大が遅い実をとってしまいます。
ミニトマト、中玉トマトは摘果はいらないので、なるだけ実らせましょう。
追肥のやり方【量とタイミング】
トマトは水やりとともに、追肥のコントロールも重要。
一回目の追肥は第三花房(ミニは四)が開花しはじめた頃で、畝肩に化成肥料30g/㎡を施してください。
マルチあり、なしともに全体にでなく、ぽんっとまとめて肥料をおくのが効果的。
その後は第五花房(ミニは六、七)が開花しはじめるころ、畝肩に同量追肥しましょう。
株の樹勢をよく観察し、追肥を見送ったりできるようなるのが理想です。
樹勢の見方と対策
収穫時期
開花後60日(夏は35日)ほどで赤く色づきます。
朝のうちにとって収穫しましょう。
手で赤く熟した実を持ち上げ、角度を変えてひねると簡単にとれます。
取り遅れると実が割れたり落果するので注意。
注意ポイント
鳥害には気を付けましょう。
大敵はカラスです。雨よけや支柱ごと網で覆ったり、酷い場合は果実のみを網で包むことで守ってやります。
失敗を防ぐ生育診断
トマトは加湿に弱く、肥料量にシビアな野菜です。
セオリーに従いながら、樹勢と実の状態を観察して追肥する心掛けをしましょう。
1つの症状でもさまざまな要因が重なっておきることがほとんどなので、ここで述べる答えは一つの参考にとどめるようにしてください。
実が割れる
乾燥状態の土壌から急激に水分が入ることでおきます。
乾燥下でちびちび肥大していたところにどっと吸水してしまい、皮の肥大が追いつかなくなって割れるというわけ。
実に雨があたったから割れるわけではありません。
また窒素過多によっても裂果は多くなります。
肥料少な目と、適度な水やりで土壌水分を安定させることが対策になるでしょう。
赤くならない
一般的には開花後60日程度と言われていますが、時間ではなく、気温で決まります。
授粉からの積算温度(毎日の平均気温を足したもの)が900℃(ミニは800℃)で収穫期と言われています。
気になるようなら過去の天気予報の平均気温を足してみると良いでしょう(面倒すぎますが)
後は品種によっても大分違ってきます。
トマトが甘くない
まず、品種によって甘さはかなり異なります。
そのうえで、トマトを甘くするには水分をやりすぎないことが重要になってきます。
ただ露地畑では水分コントロールがしきれないので狙って甘くするのは難しいのが本音。
玉が小さくて良いなら、一切水やりはしない方法もありです。
塩分の含まれた土壌にしてストレスを与え甘くする方法などがありますが、他野菜に悪影響を与えるのでおススメしません(プランターはいいかも)。
アオサなどの海藻を使えば甘くなるという話もあったり、寒い時期につくるトマトも格段甘くなります。
実が落ちる・ならない(花が咲かない)
実が落ちるのは良好に育っていてもありえます。
頻繁に落ちる場合は窒素過多、あるいは乾燥状態にある可能性があります。
花が咲いてもならないのは、授粉していないので低温期はトマトトーン(着果ホルモン剤)を使用して対処します。
そもそも花が咲かないのは窒素過多で栄養生長(株を大きくさせる)に傾いているからです。
皮がかたくなる
まず、品種によって皮のかたさには大きな差があります。
そのうえで、トマトは乾燥状態が続き水分不足になると蒸散(呼吸による蒸発)を防ぐため葉だけでなく実もかたくなります。
水やりを多くして水分吸収を上げればその分皮は柔らかく、実は大きくなりますが甘さは失われていきます。
なりやすい病気
尻腐れ病
カルシウム不足が原因で起きる生理障害で、実の先から腐っていきます。
ただし実際、土壌中にカルシウムがないのではなく、窒素肥料のやりすぎや、水分不足が原因が多いです。
うどんこ病
多湿で葉の表面がうどん粉のような白いカビで覆われて光合成を阻害します。
疫病
低温で雨の多い時期に発生し、茎から葉まで水がしみ枯れたような病斑が出来ます。
モザイク病
茎の先端が黄色く縮れる症状はウイルス感染によるモザイク病です。一度感染すると農薬でも治せません。
青枯れ病
元気に育っていた株が急に青いまましおれて枯れてしまいます。
萎凋病
根からカビが侵入することでおき、茎の先から全体が黄化して枯れます。
つきやすい害虫
アブラムシ類
新芽、葉、茎などいたるところを吸汁して生育阻害します。排泄物でべとべとになり、すす病を誘発。モザイク病を媒介します。
ハダニ類
葉や茎について吸汁します。葉の色が点状に抜けて、しだいに全体が白くなり生育阻害されます。
オオタバコガ
幼虫が果実に穴をあけもぐりこんで内部を食害します。
オンシツコナジラミ
葉の裏につき、吸汁して生育阻害します。すす病を誘発します。
ネコブセンチュウ
根に寄生して生育阻害します。根に傷ができるため病気のリスクが上がります。