家庭菜園研究家のもぐみん(@agrimichi)です。
家庭菜園初心者向けに、じゃがいもの栽培・育て方の基本をまとめました。
一般的な知識だけでなく、自身の経験から得たノウハウを盛り込んでいるため、初めての方も安心してじゃがいもを育てることが出来る内容になっています。
じゃがいも栽培の特徴
科目 | 発芽(ほう芽)適温 | 生育適温 | 連作障害 |
ナス科 | 15~20℃ | 15~23℃ | あり(3年程あける) |
日当たり | 株間 | 収穫まで | pH(土壌酸度) |
日なた | 25~30㎝ | 3か月半程 | 6.0~6.5 |
じゃがいもの原産地はアンデス高原で、冷涼な気候を好む作物。
種イモを直接植えることで芽を出し、地中でイモが増殖します。
芋は光に当たると緑色(緑化)し、毒性のあるソラニンが生成されるため栽培では日に当てないようにしなければなりません。
収穫は種イモを植えてから3カ月半で出来、元の10倍以上も穫れるためお得感にあふれています。
極端な寒さ(霜)や暑さ(30℃以上)に弱いので、日本では比較的涼しい時期の春植えと秋植えが基本。
水はけのよい砂壌土が適し、多湿には弱いため高畝にして育てましょう。
土がアルカリ性に傾くと病気になりやすくなるため、酸度矯正(苦土石灰の施用)は控えめにするのも肝。
ポイント
・アルカリ性に傾かない土を
・サツマイモと違って肥料はちゃんとやる
・ナス科との連作は避ける
じゃがいもの人気品種一覧
じゃがいもは多くの品種があり、ホクホクした粉質系からしっとりした粘質性までのさまざま。
春植え、秋植えにそれぞれ適したものもあります。
ここではその中でも育てやすく、初心者におすすめな品種をあげておきます。
春植え用じゃがいも
メークイン(粘質)
男爵(粉質)
秋植え用じゃがいも
デジマ
ニシユタカ
じゃがいもの栽培時期
じゃがいもの地域ごとの栽培スケジュールになります。
種イモの準備
種イモは病斑のない綺麗なものを選びます。
食用はウイルスを保有している場合があるため、必ず植えつけ専用の検査合格書のついたものをホームセンターや園芸店で購入してください。
選ぶ基準としては、なるべく小さい種芋がたくさん入っているものが良いです。
メモ
植え付ける当日~数日前に種イモ一片が30~40gになるように包丁で切ります。
1片が60~80gになった場合はさらに半分に切りましょう。
50g以下のじゃがいもはそのままで構いません。
注意ポイント
秋作は大きくても切り出さず、丸ごと植え付けることをおススメ。
気温が高く切り口が格段に腐りやすいためです。
種イモの先端からお尻の方に向けて縦に切ります。
粒状のくぼみ点(芽)がそのまま新芽となるので、芽の集中した先端に近い部分から縦に切ることで1片あたりの芽の数が偏りません。
その後切り口に草木灰をつけます。
じゃがいもの切り口は水分が多く、そのまま植え付けると腐りやすいためです。
この状態ですぐに植え付けることが出来ますし、数日陰で軽く乾かしても良いですよ。
通常栽培とマルチ栽培について
ジャガイモの栽培方法には大きく
・通常栽培→二回ほど追肥&土寄せをする
・黒マルチ栽培→追肥・土寄せなし
の2つがあります。
通常栽培【ジャガイモが出来る仕組み】
ジャガイモは種芋を植えると、茎(ストロン)が伸びてそこから新たにジャガイモが出来肥大していきます。
土の表面付近に出来るので、随時土寄せしないと日光により緑化して毒性を持ち食べられなくなってしまいます。
土寄せすることで新たにストロンと根を伸ばし吸収するスペースが出来るので、芋も出来やすくなるというわけ。
マルチ栽培について
マルチ栽培だと最初に黒マルチをかけ遮光するので、日光を防ぐため遮光する手間が掛かりません。肥料持ちも良いので元肥のみで追肥もなし。
良い事づくめのようですが土の状態や気温によって、覆土の深さやマルチをかけるタイミングを間違えると芽が出ないこともあります。
あと小規模の家庭菜園なら、最初のマルチがけと芽出し作業を考えるとさほど通常と手間も変わらなかったりするので、一概にマルチ栽培の方が良いとは言えません。
土づくり【酸度矯正・堆肥の入れ方】
植え付けの1~2週間前に苦土石灰を50g/㎡入れしっかり混ぜこみ耕します。
そしてこのとき、高さ20cm、幅90cmの畝をつくっておきます。
当日2~3㎏のバーク堆肥or腐葉土を、畝が崩れない程度に混ぜ込みましょう。
土作りポイント
・酸度矯正は植え付け一週間前に済ませておく
・苦土石灰は少量にしPHを上げすぎない→そうか病対策
・堆肥は植物性堆肥(バーク堆肥・腐葉土)であれば当日投入OK
肥料の入れ方&植え付け
肥料の入れ方や植え付け方法は通常とマルチでは微妙に異なります。
先に共通のポイントを示しておきましょう。
・肥料は直接芋に当たらないようにする→種芋の腐り防止
・10cm以上(粘土質5㎝)深く植えない→発芽率が格段に下がるため
・種芋切り口を地面に向ける→水が溜まり腐るのを防止
通常栽培
畝全体に深さ20cmほどの溝を30cmごと(条間50~70cmになる)につくり、種イモ片を株間25cmで置いていってください。
この時種芋の切り口は水が溜まって腐らないよう下に向けます。
化成肥料888を芋と芋の間に20~30gまとめてポンと置いていき、その後10cm程覆土したら完了。
※写真はないですが、ここで肥料を間に置いていきます。
マルチ栽培
株間・条間ともに30㎝ほどあけ千鳥植え(交互に埋める)します。
10cm(粘土質5㎝)ほどの深さで埋めていってください。
肥料は追肥をしないので、元肥として化成肥料888を1㎡200g(約4握り)やります。
芋と芋の間に20~30gおきにまとめておいていきましょう。
最後に黒マルチをかけて完了。
メモ
秋栽培の場合、暖地や中間地は芽が出揃ってからマルチがけすることをおススメします。
気温が高いため、最初にマルチをかけると芋が煮える可能性が高いからです。
マルチ栽培の芽出し
だいたい植え付けから15日~30日後、芽が出てきます。
畝に被せた黒マルチに、突起状のふくらみが出ます。
マルチを少し破って芽だけ地上に出してやりましょう。
芽を出さずに置いておくとマルチ熱で枯れてしまう場合があるので、見つけたらなるべく早く出してください。
芽かきの仕方
植え付けから約一か月後、種芋1片あたり5~6本は芽が出てきます。
芽が出揃い草丈10~15cmほどになったら、勢いの良い太い芽を二つ残して芽かきしてください。
なるべく根元から引き抜きぬかないとまた芽が出てくるので、種イモ付近を片手で抑え、手を土中に押し込んで横に割くようにかきとりましょう。
こうすることで、養分蓄積が二つの芽に集中し、大きなじゃがいもが穫れるようになります。
メモ
水やりはいらない
じゃがいもは本来、涼しく乾燥したアンデス地帯で生息していた作物。
乾燥に強いため、植えつけてから水やりは一切いりません。
逆にやりすぎると種芋が腐る原因になってしまいます。
追肥と土寄せの仕方【芽かきと花が咲く頃に】
通常栽培は芽かき時と、約3週間後の蕾がつき花が咲きそうになるころの計2回、追肥と土寄せをします。
ジャガイモは日光に当たると緑化し、有毒化して食べれなくなるので必ずしっかりと土寄せしましょう。
最初の追肥&土寄せ
芽かき時に40g/㎡の化成肥料を株の周りにまき、表土と混ぜ合わせ(中耕)ます。
そして株元に5cmほど土寄せしてください。
2回目の追肥&土寄せ
それから約三週間後、蕾がつくころに再度追肥と土寄せをします。
株の周りに40g/㎡の化成肥料をまき、通路の土も使い10cmの厚さで土寄せしてください。
2回目の土寄せ完了後も、大きくなりはじめたら随時芋がみえていないか確認し、場合によってはもう一度土寄せしましょう。
マルチ栽培は元肥を入れ、マルチを張っているので追肥・土寄せともに一切いりません。
黒マルチが光をシャットアウトしてくれるので、土寄せせずともジャガイモが青くならないです。
収穫方法【時期とタイミング】
葉が黄色く枯れ、茎が倒れてきたら収穫の合図。
雨に当たると腐りやすくなるため、晴天が3日以上続き土が乾いた日に穫ります。
最初に一株ほど試し掘りして大きさを確認するのも手です。
あまりに小さいならもう1~2週間置いてみましょう。
マルチ栽培の場合は、黒マルチをカッターなどで切って取り除きます。
株元から20cm以上離れたところにクワを入れて、てこの原理で上げながらほぐしてください。
そして十分に土がほぐれたら、株元をつかんでイモを掘り起こしていきます。
注意ポイント
・収穫後、絶対に長時間直射日光に当てない→芋が緑化して有毒化します
・ジャガイモになった実は絶対に食べない→有毒のソラニンを含むため
収穫後の保存
収穫した後は、緑化しないよう日陰で数時間乾かした後に収納してください。
積み上げるとすぐに腐ってしまうので横並びしておくようにしましょう。
その後は新聞紙などに包んで日の当たらない涼しい場所(5℃前後・湿度95%程度が最適)に置いておきます。
逆さ植え・浅植え栽培って?
逆さ植えとは、種芋の植え付け時に芋の切り口を下にせず逆さに置いて植える方法です。
逆さにすることで強い芽だけがぐるりと底から回って出てくるので、芽かきの必要がなく、大きな芋ができやすいと言われています。
浅植え栽培はマルチ栽培の際、種芋を埋めずに畝表面に置くだけで育てる方法。
埋めるのと収穫時に掘る手間が省けます。
メモ
逆さにすると水がたまり腐りやすい、浅植えは暖地など高温下では煮えて発芽率が下がる・肥料を通常より吸いにくく収量が下がるなどのデメリット意見もあるので、過信せず比較してみると面白いかも。
失敗を防ぐ生育診断
実が割れる
生育後半で乾燥や高温にさらされ生長がとまったところ、降雨で急激に水分を吸収すると生長が追いつかず、実が割れることがあります。
皮がもともと薄いデジマやキタアカリでも起きやすいと言われています。
花が咲かない
coming soon…
実が腐る
生育中に腐りやすいのは植え付け直後です。
はじめに水をやりすぎるとそのまま腐ることがあるので注意。水やりしないか、軽く湿らせる程度にしましょう。
収穫後腐るのを防ぐには、晴天時が続く日に取る&陰干しをしっかりしましょう。
空洞ができる
空洞は男爵で起きやすい傾向にあります。
原因はさまざまで、多肥、あるいは乾燥、高温など急激な環境変化が考えられます。
大きくなりすぎた芋もなりやすいです。
早くに枯れる
ジャガイモは早植えすると、新芽が茶色く枯れてしまうことがあります。
遅霜の被害なので、トンネル栽培をするなどして対策をしましょう。
また、早植えする方法としては植え付ける前に地面に種イモを並べビニールトンネルをかけて芽出しする方法があります。
その他、病気感染が疑われます。
なりやすい病気と対策
そうか病
表面が茶色いかさぶた状になります。土壌PHが高くなりアルカリ化していることが原因なので、次からPHを測り苦土石灰の散布量を調整することで防げます。