家庭菜園研究家のもぐみん(@agrimichi)です。
家庭菜園初心者向けに、ナスの栽培・育て方の基本をまとめました。
一般的な知識だけでなく、自身の経験から得たノウハウを盛り込んでいるため、初めての方も安心してナスを育てることが出来る内容になっています。
ナスとは
ナスはナス科に属し、つややかな紫色の実がなる野菜です。
日本では紫色が一般的ですが、アジアでは緑、白色一般的。
味に強い癖がないため、揚げ物から煮物など日本食にとどまらず、中華やイタリアンにも使われています。
ナスは90%以上が水分で栄養は少ないとも言われますが、ナス特有の成分を持っています。
皮の色素は「ナスニン」というポリフェノールで抗酸化作用、生活習慣病予防に。
さらにカリウムや食物繊維も含まれます。
栽培は肥料と水を多量に必要としますが、その美味しさと料理の幅の広さから家庭菜園でも大人気。
上手く育てれば1株で数十本収穫することも可能なので、ぜひ挑戦してほしいところ。
ナス栽培の特徴
科目 | 発芽適温 | 生育適温 | 連作障害 |
ナス科 | 25~30℃ | 23~28℃ | あり(5年程あける) |
日当たり | 株間 | 収穫まで | pH(土壌酸度) |
日なた | 50㎝ | 約4ヶ月 | 6.0~7.0 |
ナスの原産地はインドで、高温多湿を好み日本の気候に適した野菜。
種まきから収穫までの期間は約4カ月で、苗からだと1カ月半で獲れます。
暑さと強い日光を好み、どちらが不足しても生育不良に陥ります。
さらに乾燥に弱く水分、多肥を好むので深く耕して堆肥を十分に投入することが肝。
夏場はこまめな水やりを欠かさずやり、追肥を忘れずに施すようにしましょう。
ポイント
・水やり、追肥をしっかり
・こまめな剪定で株を維持
ナスのおすすめ品種一覧
ナスは長いものから短いものまでいろんな大きさの種類があります。
その中でも育てやすく、初心者におすすめな品種をあげておきます。
とげなし千両二号(長卵系ナス)
ナスと言えばこれ! というほど代表的な品種のとげなし。
育てやすく、実の皮がやわらかいためどんな料理にも合う万能ナスと言える。
PC筑陽(中長ナス)
長ナスの中でも実が繊密かつ、丈夫で育てやすい定番品種。
「PC」がつく種は2017年新品種で、とげなし、単為結実性(授粉なしで実がなる)なのでより育てやすくなっている。
庄屋大長(大長ナス)
35~40cmほどにもなる大きく長いナス。
夏の暑さに強く、生育旺盛でぐんぐん育ちます。
種が少なく実がやわらかいので、焼きナスにすると絶品。
ナスの栽培時期
ナスの地域ごとの栽培スケジュールになります。
種まきと育苗【発芽のコツ】
種まきから定植までだいたい二ヶ月半以上かかります。
植え付け適期の5月中旬以降(一般地)に植え付けれるよう、3月初旬から種まきしましょう。
培養土を入れた3号(9㎝)ポリ鉢にまず水をかけ、1cmのくぼみをつくって種を三粒均等におきます。
そして5mm程土をかぶせ軽く押さえつけ、水を再度十分にやってください。
発芽率を上げるため、ビニール温室や不繊布をかけるなどなるべく暖かい場所(25℃~30℃)におきましょう。
本葉が一枚出る頃、育ちの悪いものを二本を間引いて一本仕立てにします。
以降、日中は25℃前後、夜は15℃以下にならないよう保温しながら育苗しましょう。
本葉4~5枚のタイミングで4号鉢に鉢上げしてください。
そのまま本葉8枚ほどの苗に育てていきます。
ポイント
・表土が乾いたら朝に水やりする(夕は徒長するので×)
・保温は日中換気で上がりすぎないよう遮光&換気
土づくり(耕し方と元肥について)
まず種まきの約一週間前に、粒状苦土石灰を150g/㎡(1㎡おおよそ3握り)まき、しっかりと耕します。
ナスはマグネシウム&カルシウム欠乏になりやすいので、確実に苦土石灰をまきましょう。
この時、耕しついでに高さ20cm、幅60cm程の畝を作っておきましょう。
そして種まき当日、堆肥・元肥を全面にばらまき畝が崩れない程度にクワで軽く混ぜこみ、平グワorレーキで表土をフラットにします。
土づくりポイント
・苦土石灰散布は、植え付けの一週間前に終わらせておく
・植物由来堆肥(バーク堆肥、腐葉土)&化成肥料なら、即日種まきOK
・堆肥を忘れずふんだんに施そう
マルチングで水もちをよく
ナスは水分を大量に必要とするため、マルチをして土壌水分を安定させましょう。
地温が上がりすぎない方が良いので、マルチは透明ではなく、黒マルチを使用します。
黒にすることで雑草防除にも役立ちます。
雨後か、畝にたっぷりと水をまいて張ると活着が良くなりますよ。
50cm間隔でカッターで十字に切り目を入れ、植穴をつけておいてください。
マルチをしない場合は、ワラや干し草などを置いてあげましょう。
苗の植え付け【時期と間隔】
苗は本葉8枚ほど、株の節間がつまり一番花が咲き始めたものを選びます。
苗を選ぶポイント
・25~30cm・頂点が紫色・開花している・肉厚でつやあり・茎が8mmほどで太い・台木の子葉あり・根が白く回っている・4号鉢
種植えから苗になるまで2カ月近くいるため、初心者は苗を購入することをおススメ。
連作障害の心配がなく、病害虫に強い接木苗がおススメです。
ただ市販苗で育ちきってない3号ポットの場合、大きめの4号ポットか鉢上げし、本葉8枚以上に生育してから植え付けてください。
株間、条間ともに50㎝間隔をとります。
ポット大の穴を掘り、あふれるくらい水を注ぎこみます。
水を十分にかけた苗をポットから抜き植穴に入れて、株元を持ちながら土を戻して軽く押さえます。
このとき2~3cmほど畝より高く浅めに植えましょう。
乾燥を防ぐため、植穴とマルチに隙間ができないようしっかりと土(バーク堆肥だと◎)を盛り込んでおきます。
最後に再度たっぷりと水やりをして完了。
ポイント
・暖かくなって植え付ける(最低気温10℃以上)
・1週間は水やりを控え根付かせる
メモ
早植え(5月初旬まで)する場合は肥料袋と支柱を使って行灯仕立てにしてやると、各段に初期生育が良くなるのでぜひ試してみましょう。
支柱の立て方
植え付け直後から風による倒伏を避けるため、支柱を立てます。
支柱は長さ150cm、太さ2cmのイボ付きが使い勝手よくおススメ。
よく家庭菜園本ではまず仮支柱を立てると書いてありますが、はじめからこの本支柱でなんら支障はないです。
株から5〜10cm離れたところに支柱をまっすぐ刺します。
支柱に根本から10cmほどの高さで余裕をもって八の字結びましょう。
水やりの頻度
「ナスは水で育つ」言われるほど水分を必要とします。
肥料も大量に必要としますが、そもそも水があってはじめて効きます。
土の乾燥状態をみて、株元や畔の表土が乾いているようならたっぷりと水をやることが肝。
特に梅雨明け以降の晴天時は毎日、気温の下がる夕方に水やりするのが理想です。
株全体を洗い流すイメージでシャワー潅水すると、害虫のハダニが流れ落ち一石二鳥。
整枝による仕立て方と誘引
ナスは主枝1本と側枝(わき芽)2本の三本仕立てにしましょう。
側枝となるわき芽は一番花のすぐ下と上のものを選び残します。
他の下から出るわき芽は早めに全部摘み取ってください。
整枝し仕立てることで病気予防になりますし、栄養が3枝に集中し収量が上がります。
誘引は植え付け時に結んだ場所から、20cmほど上の主枝にヒモをゆるく八の字結びします。
そして側枝2本に沿って支柱を刺し、同じ間隔で八の字結びで誘引してください。
各枝に支柱が固定されることで、実がなっても重みで折れたりする心配がなくなります。
メモ
初心者はまず3本仕立てがおススメですが、他にも主枝のみにする1本仕立て、4本仕立てなどいろいろな仕立て方あります。
また、たくさんの株を植えるor支柱の節約をしたい場合は、V字に支柱立てして誘引する方法が楽です。
畝へ3mおきにV字で支柱を刺していき、太めの麻紐かマイカー線を30cm間隔で横に張って株を支え、誘引します。
追肥の仕方
ナスは野菜の中でもかなり肥料食いで、こまめな追肥が欠かせません。
植えつけてから約一ヶ月後(or一番果を収穫した後)化成肥料888を30g/㎡追肥します。
マルチ栽培の場合は、株間にマルチ穴をあけまとめて入れてください(穴肥)。
それから約2~3週間を目安に追肥していきます。
2回目、3回目と徐々に株から離し、根が伸びる先に置くことを意識してください。
マルチ栽培は畝肩にマルチ穴をあけてやります。
4回目以降は十分に根が伸びてきているため、畔に同量をパラパラと蒔くやり方で十分効きます。
メモ
追肥するタイミングは花の付く位置と状態でわかります。
肥料が足り健全な場合、花の上方に何枚か葉がついています。
花の色も濃いく、雄しべより雌しべが長くなっています。
逆に花が枝の先端につき、花色は薄く、雄しべよりも雌しべの方が短くなると肥料不足。
曲がったナスができたり、実のヘタとガクが不均等な場合も肥料が不足している場合が多いです。
他は葉が紫色なら十分足りており、薄くなると徐々に肥料不足なのですが、見極めがやや難しいです。
下葉かき
三本仕立ての枝がしっかり伸び、梅雨時期に入ったころ、株元から40~50㎝の下葉はすべて摘みとりましょう。
随時、枯れた葉や、込み合って葉が重なるところもとってください。
下の風通しをを良くすることで病気を防ぎ、生育も良好になります。
収穫と剪定
開花後20~25日で12~13㎝(一般的な長卵系ナス)になったら収穫時期。
長ナスは約35cm、紐ナスは約25cmを目安にしてください。
大きくなりすぎると「ボケナス」と呼ばれ、艶を失い食味が落ちるため取り損ねに注意します。
一番果、二番果は株の成長を優先し小さめで穫り、たくさんなりすぎた場合も若どりを心がけ樹勢を回復させます。
主枝と側枝2本に直接実ったナスは、ヘタの部分をハサミで切り取って収穫してください。
脇芽の剪定収穫
主枝、側枝からさらに脇芽が出て実るナスは、脇芽ごと切り取って収穫します。
まず脇芽に花芽がついたら、その上の葉一枚を残して脇芽先端を摘み取ります。
同時に脇芽から出るさらなる脇芽も、一番根元だけ残して摘み取ってしまいます。
そしていざ実がなったら、脇芽の根元から剪定(切り戻し)して収穫してください。
最初に残しておいた根元の脇芽の脇芽がまた生えてきているので、花芽がついたら同様の繰り返し。
こうすることで途中、なりつかれせず長期に安定して穫れるようになります
更新剪定のやり方
7月下旬になると暑さで株が衰えてくるので、枝と根を切って(更新剪定)休ませるのが一般的。
ただ収穫と剪定事項で述べたように3本仕立てから出る脇芽を剪定収穫すれば、更新剪定する必要はありません。
~更新剪定をする場合~
それぞれの枝すべてを半分の長さになるまで切り取ります。
枝に花や実があっても思い切って切り、古くなった葉も取り除きましょう。
株元から30cmほど離れた両脇にスコップを刺します。
マルチがある場合、上から突きさして破って構いません。
深さ30cmくらいまで根を切りながら土をほぐしましょう。
その後ほぐした両脇の土にそれぞれ化成肥料30gとバーク堆肥(腐葉土)1kgを混ぜ込みます。
おわりに水を大量にまいておきましょう。
こうすることでなり疲れした苗が復活し、涼しくなるころに美味しい秋ナスを収穫できます。
失敗を防ぐ生育診断
葉が丸まるのはなぜ?
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葉がしおれてしまう
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せっかくついた花が落ちる
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小さく硬い実が出来る
「石ナス」と呼ばれ、急激な温度変化によって、授精出来ず固くなります。 何個も続くようなら、ホルモン剤で授精させる対策をとります。
実に艶がない
「つやなし果」と呼ばれ、水分不足で皮に艶がなく硬くなります。水やりを十分にやることで対策します。ただ、水が十分あっても、根が老化、カリ不足などで弱って吸えない場合も考えられます。
実がいびつな形に
形により「双子ナス・へん平果・下出し果」などと呼ばれます。低温が続く、潅水、肥料のやりすぎなどさまざな要因で栄養過剰になり形がいびつになります。この症状が出たから~が悪い! とは言い切れないのが正直なところです。