もぐみん(@agrimichi)です。
突然ですが、いつもTwitter発信を観ていただいている方々、あるいは初めて検索からブログに来てくださった皆さんに報告があります。
なんと‥
なんとこの度、家庭菜園雑誌の「やさい畑 春号 2020年 4月号」(3月3日発売)に、僕が取り組んだ栽培比較実験が掲載されました!
実験内容は「さつまいもを9種類の土で栽培比較」したものです。
「やさい畑」は日本で最初の家庭菜園専門誌で、おそらく菜園家の方なら知らない人はいないと言っても過言ではない有名雑誌。
実験に基づく比較検証記事を豊富に掲載されているのが特徴で、今回僕が行なった栽培実験を
「サツマイモにぴったりの土はどれ? 」
と題し取り上げていただくことになりました。
家庭菜園をされる方々の好奇心をくすぐり、さつまいも栽培に役立つ内容になっています。
肝心の本記事では、雑誌に乗り切らなかったところも含めて、9種類の土で栽培比較した実験の全容を超詳細にお伝えしていきます。
先に言っておきましょう。
ぶっちゃけ、本記事は長いです。
そして微妙にマニアックで小難しそうなことも言ってます。
一方、家庭菜園誌「やさい畑」では初心者でもわかりやすく、視覚的に理解できるように神編集されたカラー5ページ。
はい‥。
とまぁ、前置きで宣伝ぽくなっちゃいましたが、ほんとに雑誌の方が簡潔でスッと入るし、タメになる情報ばかりなのでよろしければご覧くださいませ。
さて、それでは本題。
9種類の土でさつまいも栽培実験の詳細(マニアック)版をお伝えしていきます!
とくとご覧あれ~!
実験のきっかけは祖父がつくるさつまいも
我が家では毎年、真砂土主体の畑でサツマイモ栽培をしています。
それなりに収量はあるものの、収穫して食べてみると、いかんせん甘みが少ないが特徴。
数か月保存したとしても、わずかに甘味がのる程度‥何か味に物足らなさが残るんです。
一方、祖父が赤土主体の畑で育てた芋をもらって食べると、穫ってから1~2週間程度にも関わらず、ホクホク度、粘りともに良く、抜群に甘い。
なぜ、こんなにも食味が違うのでしょうか。
土が大きく食味に影響しているのでは?
昨今ではさまざまなさつまいも種が出ており、品種によって食味が異なります。
そして同品種であっても、施肥の量、環境(日照り、水量など)で甘味が変わると言ってしまえばそれまで。
収穫後も保存しておけば甘味が増していきます。
さらに調理の加熱方法しだいで、甘味を各段に上げることが出来るのも事実。
祖父の育てたサツマイモが格段に美味しいのも、品種の差や、施肥量・栽培環境の違いによるものなのでしょう。
ただその中でも栽培環境において
「土種の違いが大きく食味に関係しているのではないか」
と思うようになります。
調べても納得はいかず‥
そもそもサツマイモ栽培は、一般的に水はけ、通気性が良い土壌なら品質の良いものが出来やすいと言われています。
我が家の土は真砂土の中でもサラサラと全体的に粒が荒いため、水はけはまぁまぁ良い方‥年によってはたくさん収穫出来ますし、栽培に適している方の土と言えるはず。
にもかかわらず、甘味は少ない‥。
どうにも気になるので専門機関に質問してみたところ「安納芋に限っては土質を選ぶが、そのほか、土の種類で大きく食味が変わることはないだろう」と回答をいただきました。
それでもやっぱり気になります。
実験から興味深い結果が‥!
他の野菜を例に挙げれば、ゴボウは粘土質土壌で育てると香り高くなると聞きますし、お米の美味しさも地域の土(鉱物)に含まれるミネラルが関係していると言われる方もいます。
となれば、サツマイモ栽培においても、土特有のミネラルや水持ち、水はけの差で美味しさ(甘味)が大きく変わるのではないだろうか‥?
そんな漠然とした疑問を少しでも解消するため、ついには9種類の土でサツマイモを栽培比較するにいたりました。
そして、途中の生長過程、結果収量・食味をみていく中で、「甘味」にとどまらず
土ごとの特性がわかり、家庭菜園のさつまいも栽培に役立つ結果を得ることが出来ました!
土ごとにどんな差が出て、何がわかったのか‥!?
ポイント
単純な好奇心と思い付きではじめたものなので、「この土で作れば一番甘い!」と断言できるような類の突き詰めた実験ではありません(比較個体も少なすぎます)。途中の生長過程、結果収量・糖度をみていく中の発見で、サツマイモ栽培、ひいては各々の土に対する理解が深まれば良いな、というのが狙い。
よって夏休みの自由研究的な感覚で、参考程度に結果を捉えていただければと思います。
それでは詳しい実験方法と結果をみていきましょう。
実験方法
花と野菜の土(元肥入り)、赤玉土、鹿沼土、真砂土、ボラ土、黒土、腐葉土、バーク堆肥、牛糞堆肥の9種類でサツマイモの栽培をし、生長・収量・糖度・食味を比較しました。
注意
※通常、バーク堆肥・牛糞・腐葉土は土壌改良材として基本用土に混ぜて使います。そのほかの土も混合させて使うケースが多いですが、今回はあくまでも実験として単体使用しているのであしからず。
堆肥の空き袋(20㎏)に各土を同体積入れ、無基肥、無追肥(花と野菜の土は元肥入り)で栽培。
出来るだけ畑内で日当たりが均一になる箇所に置き、大雨時、水が溜まって他から養分を吸収しないよう底に木板を置きました。
牛糞堆肥は養分が特段濃いく、他土袋に影響が出る可能性が高いため、板の上でなく直置き。
栽培品種は紅はるか。県内の農協で苗を40本購入(同生産者)。
節の数が同じ苗を18本選別しました。
そして各土袋に苗を2本ずつ植え付け。縦に差し込む際、埋まる節が均一になるようにしました。
植え付け日は6月2日。
培中の水やりは各土で偏りがないよう、1袋同じ秒数でまくようにしました。
定植後2~3週間は表土が乾燥しないよう気を付けて水やり。
その後は梅雨に入ったこともあり、降雨まかせ。
梅雨明け後は1~2週間以上晴天が続いた際、あるいは萎れがみられた際に水やりを行ないました。
植え付けから一ヶ月に一回、葉の展開数を記録。
収穫は植え付けから137日後に行ないました。
袋を裂いて根の張り方を確認後、各土のサツマイモ収量を測りました。
後日、各土個体の重さ、直径、胴回り・糖度を計測してラベルをつけ判別できるようにしました。
縦直径は横直径が1cm未満になる箇所までを芋として計測。
糖度計測にはATAGO ポケット糖度計 PALJを使用。
収穫9日後の生サツマイモをまずすりおろし器で中心部をすりおろし、
お茶パックに入れて抽出した液体を計測しました。
沈殿がおきないよう、爪楊枝で攪拌した後即座に計測。
個体ごとに計測タイミングがずれないよう注意しました。
腐敗で変色している芋、横径が2㎝未満のものは計測から除外しました。
加熱後は中心部をペースト状のまま計測。
加熱後の糖度計測と食味評価は、生の糖度計測の次の日(収穫10日後)に行ないました。
加熱方法は蒸し器を使用し、IHクッキングヒーターで加熱しました。
1ℓの水を入れ強火で沸騰させ、蒸気が音を立て出だしたら芋を投入。
再度音を立てて蒸気が出るタイミングで弱火に変え、そこから10分弱火のまま加熱して取り出しました。
9種類すべての加熱が終わった約3時間後、順に糖度計測を行ない、実際に食べて味を評価しました。
生長における葉展開数の推移
6月2日の植え付けから三ヶ月間は腐葉土、黒土で葉の展開が100枚以上、花と野菜の土は250枚以上と、顕著な生長がみられました。
それ以降、花と野菜の土は葉枚数が大幅に減り、腐葉土、黒土はゆるやかに葉枚数が減少。
赤玉土は3ヶ月後までに約80枚になり、それ以降、収穫までほぼ同じ葉枚数を維持しました。
鹿沼土は約40枚葉を展開させた二ヶ月以降、ゆるやかに葉枚数が減少しています。
真砂土、ボラ土、バーク堆肥は1ヶ月後の30枚程度の状態から収穫まで緩やかに10枚程度葉枚数が増えました。
牛糞堆肥は植え付けから一週間程で枯れたため0枚としています。
生長の様子
生長の様子です。(袋は右から花と野菜の土、赤玉、鹿沼、真砂、ボラ、黒土、腐葉土、バーク堆肥、牛糞で上写真は植え付け直後6月2日)
植え付けから一週間程で牛糞堆肥の苗は枯死しました。
一ケ月後、花と野菜の土は極端に葉色が薄くなり、真砂土、ボラ土、バーク堆肥は葉色が薄く、薄黒い色もまばらにみられます。
黒土と腐葉土が特に旺盛に生長しているのがわかります。
二ケ月後、花と野菜の土は袋がみえないほど葉が展開して、葉色も良くなってきています。
鹿沼土の葉色は悪くなり、全体的に薄黒くなっています。
黒土、腐葉土の生長は相変わらず良いですが、腐葉土の葉が全体的に縮れた様子になっています。
三ケ月後、花と野菜の土の葉色はほぼ良好になり、9種類の中でも最も多く、大きく葉が展開しています。鹿沼土の葉が少なくなっています。
赤玉土、黒土は生長し葉は多くなっていますがわずかに葉色が薄くなってきています。
腐葉土は縮れた葉のまま、生長しています。
四ケ月後はどの土の苗も生長がほぼ止まり、葉色が薄くなってきています。
四ケ月半後の収穫時には、さらに葉色が薄くなっているのがわかります。
腐葉土の葉のついて
腐葉土で育てたさつまいもの葉のみ、栽培二カ月後ごろから縮れたような形になりました。
専門機関に質問した結果、ダニの吸汁被害が怪しいのではとのこと。
収穫間際になって葉裏をルーペで確認してみたものの、すでに繁殖シーズンを終えたのか、あるいは目視出来ないほど小さいためか確認はできませんでした。
ダニは十分に栄養のある葉につきやすいそうです。
花と野菜の土(元肥入り)の葉色が一時的に薄くなったことに対して
今回使用した花と野菜の土(元肥入り)はディスカウントストアで買ったメーカー不詳のものです。
外見からはおがくずやチップ系の堆肥とパーライトor細かい軽石が少量含まれているように見えます。
専門機関に聞いてみたところ、細かく軽い有機質(堆肥)主体のため乾湿差が激しく、水が足らずに養分を十分に吸収できなかったためで、後半は水分が十分にあり回復したのではないかと回答をいただきました。
他に考えられる原因として、自身の推察ですが、有機質が十分に醗酵していない未熟堆肥の状態で、水分が加えられたことによる一時的な再発酵で窒素飢餓を起こしたためではないかと考えています。
牛糞堆肥の苗が枯れたことについて
牛糞堆肥は植え付けて一週間経つ頃には、急速に萎れ枯れてしまいました。
おそらくEC値が高すぎて(塩類が多すぎて)水分を吸収できなかった(浸透圧差で逆に吸い取られた)ものと考えられます。
使用袋記載の成分量は
窒素1.4%、
リン酸2.3%
カリウム2.6%
C/N比18
上記の数値のみではわからないのでさつまいものEC値(塩類濃度)耐性と、牛糞自体ののEC値(塩類濃度)について調べました。
サツマイモはEC値0.8~1.5mS/cm(財団法人日本土壌協会・土壌診断によるバランスのとれた土づくりvol.3・p8から引用)まで耐性があるとされていますが、牛糞堆肥はEC値5.2mS/cm(肥料・土つくり資材大事典農文協のp1223第一表牛糞・おがくず数値から引用)というデータがあり、明らかに単用では高すぎるのがわかります。
収穫時における土と根の状態
収穫は鎌で袋を裂き、芋が連結したまま取り出せるよう注意して土を崩しました。
それぞれ土の乾燥状態、根の張り方に違いがありました。
いずれの土も袋全体の上半分付近に芋がまとまって出来ていました。
花と野菜の土は、土が乾燥しカチカチになっており、金槌で叩かなければ崩れない程。
細根がびっしりと張られていました。
赤玉土は袋を裂いた瞬間、土が崩れ落ちました。土は保水しているものの、素手で触った感じはサラサラと乾燥時とほぼ変わらない質感。
鹿沼土も赤玉同様、土は崩れ落ちました。水分をかなり含んでいて、触ると手が水で濡れるのがわかる質感でした。細根はかなり少なめ。
真砂土は運ぶ時、重すぎて一人で運べない程でした。表土は締まって固くなっていました。水分をしっかりと含んでおり、細根は少なめ。
ボラ土は袋を裂いた瞬間、土が崩れ落ちました。全体的に土は湿りぎみ。
黒土は土表面にコケかカビのようなものがみられました。土は適度な保水でしっとりした湿感。細根はしっかりと端まで張っているのがわかります。
腐葉土はびっしりと細根を張り、底の方(写真の左上付近)で新たに芋が出来始めていました。
土は保水しているものの、触った感じは少ししっとりする程度の湿感。
バーク堆肥はかなり保水していて、触ると軽くドロドロと崩れる状態。
白アリが発生していました。(使用したものが粗悪であったというわけでなく、単体使用&水はけしにくい袋栽培下で、白アリに適した環境が出来増殖したのだと思われます。白アリは植物質と水分がある環境なら大抵どこにでもいるそうです。)
収量結果
花と野菜の土が249.5g、赤玉土が383.5g、鹿沼土が165g、真砂土が188.9g、ボラ土が177g、黒土が550g、腐葉土が559.4g、バーク堆肥が196gでした。
花と野菜の土は葉枚数の割に低い収量となりました。
腐葉土、黒土の収量が高く、次いで赤土、その他は似たような収量になっています。
収穫物の見た目について
花と野菜の土、腐葉土は割と長細い形になりました。
黒土、赤玉土は太目、その他も小さいものの太目でした。
サツマイモの太さは土の重さや固さが関係しているとのこと。
花と野菜の土と腐葉土の土は軽く、柔らかいことが関係しているのでしょうか。
ただバーク堆肥も似たような物理性なものの、少し丸みを帯びていることをみると一概には言えず、水分の多さなども形成に大きく関係しているのかもしれません。
全体写真はそれぞれ大きく色が違って見えますが、水洗いなしで撮っているので、表皮の土が落ちきらない状態です。
特にバーク堆肥、鹿沼土は芋に土がこびりついてとれませんでした。
水洗いして土を完全に落として見比べてみると、生の状態では表皮の色にほぼ差がないように見えます。
断面図を見比べても、ほとんど中身の色に差はないようです(写真は光の加減で少し違ってみえています)。
鹿沼土は表皮から腐敗がみられ、断面も一部黒くなっている、中身全部が茶色になっているものもありました。
バーク堆肥は表皮が白アリに喰われており、その箇所から腐敗し、同様に黒く変色しているものがありました。
生の糖度結果について
1個体ずつ糖度計測し、土ごとの平均値を出しました。
花と野菜の土は約11.5%、赤玉土約12.2%、鹿沼土約12.1%、真砂土約12.2%、ボラ土約12.6%、黒土約12.6%、腐葉土約10.4%、バーク堆肥約10.8%でした。
バーク堆肥、腐葉土が他の土より糖度が低く、花と野菜の土も若干低い結果になりました。
この三種の土は有機質(腐植)主体の土であることが共通しています。
腐葉土は全体的にサイズも大きいため、糖度も高いと予想していましたが思いのほか低い結果が出ました。
元肥が入っている花と野菜の土が低いのも意外です。
糖度と芋の大きさに相関がみられないか、重量、胴回りとの関係を点グラフにしてみました。
しかし個体数が少なすぎて傾向はわかりませんでした。
加熱後の糖度は信頼できる値を得られず
全ての加熱が終わる三時間後、計測しましたが信頼できる値を得られませんでした。
ペースト状の芋を置いて何度か計測ボタンを押すと、同じ状態にも関わらず最大15%近く糖度値に差がみられました。
メーカーに相談した際も、固形物は正しい結果が出にくいと言われていました。
実験前、試しに他の芋で加熱後糖度を測った時も、測定値が安定せず、かつ芋を置く時間が長いほど乾燥するためか、糖度値が高くなる結果が出ました。
加熱後の芋の外観について
加熱後、それぞれの芋を見比べてみると違う品種かと思うほど、見た目に差がありました。
特にしっかりと大きさのある花と野菜の土、赤玉土、黒土、腐葉土は違いが顕著でした。
写真では実際に見たときほどの差が写せていないのが残念です。
加熱後断面図の全体写真も加熱後数時間が経過している事と、光の加減であまり差を確認できません。
しかし加熱直後の赤玉土と花と野菜の土の比較写真を見てもらうと、明らかに外皮、中身の色が違うのがわかります。
食味評価
食味評価はそれぞれの芋を「甘さ、なめらかさ、ほくほく度」の5段階評価し、感想を記録しました。
評価人数は3人。
先入観がないよう、話し合わせすることなく1人ずつで評価し、後に3人の中間評価を出しました。
花と野菜の土が不味いという感想は2人一致。
赤玉土、黒土は3人とも一致で美味しいと評価しました。
特に黒土の芋は格段に美味しく感じました。
腐葉土は大きい割に美味しくない、何か足らない味がすると感じました。
鹿沼土の芋は、ほとんど腐っていたので一個のみの評価ですが、口に入れた瞬間強い甘味を感じました。
その他はどれも似たり寄ったりで特徴を感じず、評価に困ったというのが正直なところです。
実験の生長・収量・食味からの推察と感想
本実験は冒頭でも述べたとおり、「この土で育てれば甘くなる!」と答えを断言できるものではありません。
各々の土によって生長・食味が異なるのは、土の固さ、養分(NPK)量、その他ミネラル、水持ち、水はけ、通気性等さまざまな要因が複合的に絡んだ結果。
加えて個体差、病害虫の有無も関係するため、本実験のみから要因を1つ1つ、確実に捉えることは到底できません。
しかし各々の生長具合、収量・糖度・食味をみていくことで、いくつか発見があり、栽培のヒントになりました。
まずは土ごとの生長・結果の推察を述べていきたいと思います。
花と野菜の土について
花と野菜の土は今回圧倒的に葉の生長が良かったですが、それは元肥入りで十分に養分(窒素・リン・カリウム)があったのが大きな要因ではないでしょうか。
そして三ヶ月後以降、急激に葉が減ったのは、一番に乾燥、次に根が生長しすぎて袋内の土では足らなくなったことが主な要因だと推察しています。
栽培時にも表土の乾燥が一番早く収穫時に根をみると土全体が乾燥しカチカチになっており、根も大量に張りめぐらされていました。
収量が少ないのも、乾燥などで葉が減るに伴って根の肥大もストップしたことが大きいのではないでしょうか。
ただ、窒素過剰によるつるぼけも原因として考えられるかもしれません。
糖度が低い、食味が悪いのも、初期の葉色が極端に薄くなる生育不良、後半の生長の停滞ぶりをみれば、不味いものが出来るのも頷けます。
そもそも「花と野菜の土」として売られている商品は各メーカーが独自の配合をした培養土なので、他を使えばまったく違う結果になるでしょう。
使用したものは有機質主体で、軽く乾きやすかったこと、未発酵状態の有機質だった可能性で生育不良に繋がったのだと推察しています。
赤玉土について
赤玉土は無肥料にも関わらず旺盛に葉を展開させ、それなりの収量で美味しいと感じる芋が出来たことに驚きを隠せません。
成分は火山灰主体ですが、他鉱物の土より幾分か養分も含まれているということなのでしょうか。
もしそうなら、栽培とは関係ないですが火山灰のなりたちからどの過程で窒素成分などが含有されるのか知りたくなってきます。
収穫時の土の状態も乾きすぎず、湿りすぎずといった湿感。
この水持ちと水はけバランスの良さも後半の葉枚数の維持や収量、美味しさに大きく関係しているのでしょうか。
鹿沼土について
鹿沼土は二ヶ月後から葉色が薄黒くなり、その後徐々に葉枚数も減少していきました。
葉枚数が少ないのはただ養分が足らないためなのでしょうか。
しかし一か月後時点では赤玉土同様に葉色が良い状態です。
その後の葉色が悪くなり、後半葉が減少したのは水持ちが良すぎて根が腐りぎみになり障害を受けたことも要因としてあるかもしれません。
またPH4~5と、酸性よりの土であることも関係しているのでしょうか。
収穫時、土の状態をみて触ると手に水がしっかりとつくほど水分を含んでおり、根の張りは悪く芋は一部腐り始めていました。
収量が低すぎて食味評価も一個のみでしたが、抜群に甘味を感じたのは腐りかけだったからでしょうか。
そういえば普段焼き芋を食べている時、たまに苦く土臭い味がする箇所(恐らく腐敗)の前後は甘味が強い印象があります。
真砂土・ボラ土・バーク堆肥について
真砂土・ボラ土・バーク堆肥は1ケ月後から葉色が薄く、明らかに養分(特に窒素)が足りてないことがわかります。
しかしその後は収穫時まで若干生長しながら、減ることなく葉枚数を維持しています。
おそらく水分バランスは良好だったのではないでしょうか。
ただバーク堆肥にいたっては収穫時、水分はかなり多めでした。
少ない葉枚数通り、それぞれ収量も低い結果で、食味も可も不可もなくの印象でしたが、もし肥料を投入したらどんな収量・食味になるか気になるところです。
黒土について
黒土は火山灰と有機質(腐植)両方が成分としてあり、リンを除き養分が元々多い(いわゆる肥沃な土)とされているので、葉の生長や高収量に納得しました。
後半の葉の減少は花と野菜の土と同様に、乾燥や根のはびこりすぎによるものしょうか。
ただ収穫時土はしっとりと程よく保湿していました。
ほくほくして芋本来の風味を堪能でき、最も美味しい芋だったのも、養分・水はけなど総合的にバランスが取れているからでしょう。
腐葉土について
腐葉土に関しては、あらかじめ収量が高いのではと予想をしていました。
というのも、以前ベビーリーフをさまざまな土で栽培比較した際も、腐葉土栽培の葉と根の生長が著しく良かったのです。
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養分や物理性(水持ち、水はけ)が良いのでしょうか。
堆肥の王様と呼ばれる所以もわかる気がします。
しかし袋記載の成分値は窒素0.7%、リン0.5%、カリウム0.2%、C/N比22。ちなみに今回使用のバーク堆肥は窒素0.8%、リン0.5%、カリウム0.4%、CN比21。
決してNPK値は高いとは言えませんし、バーク堆肥と似たような値にも関わらず、収量は雲泥の差。
NPK成分以外の要因でここまで生長に差が出るのが驚きでしかありません。
ただ今回腐葉土は通常サイズに迫るほどの芋が出来たにも関わらず、甘味が少なくあまり美味しくなかったことが気になります。
何か足らない養分・ミネラルがあったのでしょうか。
全ての土を比較して
糖度、食味を全体で捉えれば、芋の出来に関わらず有機質主体の土(花と野菜の土・腐葉土・バーク堆肥)の糖度が低く、あまり美味しくない結果だったのが興味深いです。
共通した要因があるのでしょうか。
そして全員一致で美味しいと感じた黒土、赤玉土に関して。
火山灰ということが共通しています。
そういえば祖父の畑も赤土でした。
最初述べたように複合的な要因が絡まっての結果ではあるものの‥もしかすると火山灰に含まれるミネラルバランスが、美味しさに繋がっているのでは‥と勝手な想像をしてしまいます。
栽培に活かせること・今後の展望
実際の畑下では今回のような一種類の土単体であることはほぼないでしょう。
真砂土、黒土、赤土主体の畑であっても、他の有機質が混じっているでしょうし、前作の肥料分が残っている状態がほとんどだと思います。
一方本実験では、単体で無肥料かつ限られた土量の袋栽培。
このような本来の生長に好ましくない条件にも関わらず、赤玉土、腐葉土、黒土で収穫量を得られたことが今回の大きな発見です。
そして他土では収量がほぼないなど、土ごとに大きく収量の差があったことで「サツマイモ栽培に肥料はいらない・いる」と巷で意見が分かれる理由もわかった気がします。
おおまかな話ですが、黒土や赤土主体の畑では施肥を少なめ、前作で肥料を投入している場合は窒素分はなしにした方がつるぼけ(葉だけが茂りすぎ)せず収量が上がりやすいのかもしれません(黒土は地域や採掘される深さで成分が結構変わるようなので一概には言えませんが)。
真砂土主体の場合は、逆にある程度施肥することは必須なのでしょうか。
我が家も真砂土主体畑ですが、前作で肥料投入した後でもしっかり規定量肥料を入れ、今年は大きな芋がゴロゴロとれています。
さらに収穫時の土の保水状態を観察することで、新たな発見や再確認できることがありました。
堆肥の中でも、バーク堆肥は他の堆肥(腐葉土・牛糞堆肥)に比べ保水していました。
また、鹿沼土も挿し木によく使用されるだけあって同じ火山灰土である赤玉土よりも水を含んでいました。
そして触った質感は赤玉土・黒土・腐葉土が乾きすぎず、湿りすぎずの状態でバランスの良さをみてとれました。
実際この三種が収量も高いことから、一般的に水はけ、通気の良い土が栽培に適すということを実感できた気がします。
今後、栽培ではないですが土ごとの水持ち、水はけを調べる実験をしてみると明確に土の特徴がわかって面白そうです。
また、水持ち、肥料持ちが抜群に高く通気性の悪い荒木田土(田んぼの土)でも栽培するとわかることが多そう。
そして今回は無肥料で栽培しましたが、次はNPKの肥料を投入して、潅水量を厳密に決め、どの土も過乾燥状態がおきないようにして栽培比較するのも当初の疑問である「土種で食味が変わるのでは?」に対する答えに近づけるのかもしれません。
番外編① 雨ざらし後の牛糞堆肥で再度栽培
牛糞堆肥の苗は植え付け早々(一週間程度)に枯れてしまいました。
その状態のまま放置し、番外編として2カ月後に1苗だけ新たに植え付けて栽培してみました。
すると今度は枯れるどころか、旺盛に生長し葉を展開させました。
おそらく牛糞堆肥が雨ざらしにされたことで塩類が洗い流されEC値が下がったのでしょう。
面白いことに、花と野菜の土と同様、一か月後に葉色が極端に薄くなる症状が出ました(同じく後に回復)。
収穫時には土の中から何匹もコガネムシの幼虫が出てきて、堆肥中に糞が多くみられました。
白アリも少数発生。9種の土の中でコガネムシの幼虫がいたのは牛糞堆肥のみ。
養分が多いと害虫もつきやすいということでしょうか。
芋は出来ておらず、細い根の状態のみでした。
本来より二ヶ月栽培期間が少ないので、この先置いていれば出来たのか、それとも窒素過剰でつるぼけし肥大がなかったのか気になるところです。
番外編② 真っ白な芋を収穫
本実験の真砂土栽培の収穫物に、中身が真っ白な芋が含まれていました。
最初は「もしや真砂土で栽培したら白い芋が出来る!?」と興奮しましたが、真砂土栽培の2苗中、1苗分だけ白く、もう1苗の収穫物は通常の色だったので、その可能性は薄そうです。
ネット上を調べてみると、家庭菜園を楽しむ人の間でもどうやら稀に中身の白い芋が出来ることがあるようです。
突然変異のものが苗購入時に混じっていた可能性が高いですが、定かではありません。ちまたでは幻のサツマイモと言われ、埼玉県秩父市においては中身が白い芋「太白」として伝統野菜になっているそうです。
せっかくなので加熱後の味を確認してみたところ、通常のものと味が明らかに違い驚きました。
食感はかなりきめ細かくさらっとした感じで、風味は癖がなく爽やか。
良く言えば白あんのよう、悪く言えば芋本来の栗っぽい味がない‥という感じでした。
実は通常栽培している収穫物にも混じっていたので(その時はシルクスイートだと勘違いして食べましたが)見つけたらそのまま来年種芋にして大量に作ったら面白いかも‥なんて考えています。
最後に
皆さん、最後まで読んでいただきありがとうございます。
え?
考察の部分からだるくなって一気にスクロールしてきたですって?
こんな長ったらしい文章読んでられませんよね。
冒頭でも言いましたが、家庭菜園誌「やさい畑」を読めばサクッとまとめられてわかりやすいのです。
では最後に‥ここまでしっかりと写真を撮り、まとめあげることは自分一人の力では絶対に出来ませんでした。
ご縁があり「やさい畑」さんから掲載の機会をいただけたからこそ。
そして知人、家族の多大なる協力があったからにほかなりません。
この場を借りて御礼申し上げます。
今後もコツコツと家庭菜園に関する記事を書いていきますので、フォロワーの皆様、検索からきていただけた皆様、どうぞよろしくお願いします。
それではっ。